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第112話

俺のあっしくんへの好感度って、そもそも高い。 小さい頃から大好きな友達だったし、再会してからも、変わったなぁって思ったの外見だけだったし。成長した分、優しさとか気遣いとかそういうところに磨きがかかって、何でも受け止めてくれそうな頼もしさや安心感みたいなのに繋がってる感じがする。 あおも、懐広くてカッコいいって言ってたし。 元々、恋愛的にじゃなくても好きな相手から『好き』って言われたら、それはもう意識しちゃうよね。付き合ったらどうなるのかな、とか考えちゃうよね。 「七織?」 人気の少ない放課後の図書館。 手を止めてぼんやりしているように見えたんだろう。あっしくんが俺を呼んだ。 ぼんやりしてたんじゃなくて、あっしくんのこと考えてたんだよ。って、素直に言えたらいいんだろうな。そんなことを思いながら、「ちょっと集中力切れたかも」と俺は笑う。 「休憩するか」 「そうだね~」 あおと由音は気を遣ってくれて、俺はあっしくんと一緒に過ごす時間が増えた。お互い知らなかった時間が埋まっていくようなそれは心地よくて、でもきっとあっしくんがそういう風に…俺が過ごしやすいように、考えて接してくれてるんだと思うんだよな。 俺だってあっしくんに居心地いいって思ってもらいたいな。 そう思うのが、きっともう『答え』なんだと思う。一緒にいたら温かくて、誰より安心する。同じように感じててほしいし、そうできるようになりたい。 手を伸ばして、俺より大きくてしっかりした手に触れる。ゴツゴツした骨の感触を辿って、指の太さを確かめながらつるりとした爪を撫でる。好き勝手する俺の手を、あっしくんは何だか機嫌良さそうに眺めていた。 「…あのさ」 「ん?」 「こういうの、嫌じゃない?」 「全然」 人差し指であっしくんの同じ指をなぞると、中指と人差し指に挟まれてしまった。熱とか感触が、しっくりくるなぁ、って感じる。 この体温に包まれたら幸せなんだろうな。 包まれたいな。 それをちゃんと、伝えたい。 「…今度、さぁ」 「うん」 「どこか行きたい。…ふたりで」 「ふたり?」 「うん…」 嫌? って俺が聞く前に、あっしくんが「どこ行く?」って俺を見た。 「…いいの?」 「いいよ、勿論。七織が誘ってくれてんだし。暑くなってきてるし、室内で過ごせる方がいいか?」 「…プラネタリウム」 ふと浮かんだのは、初めて4人で遊んだ日の帰りに圭典が佐田さんと一緒に行ってきたと言っていたプラネタリウム。 あの時俺はまだあっしくんのことを好きになってなかったけど、『誰か誘って行こう』って思った時に浮かんだ『誰か』は、あっしくんだった。 楽しみだな。と、あっしくんは穏やかに笑った。

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