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第115話

「滝島のことは、もういい、でいいのか…?」 「え、うん」 あっしくんはすごく慎重に聞いてくれたけど、めちゃくちゃあっさり頷いてしまった。 いや、本気で好きだったよ? 好きだったけど…。 「圭典に必要なのは俺じゃないって納得してるし。告白してくれた後ずっと、圭典のこと考えてなかったよ。そんな暇ないくらい…あっしくんのこと考えてました…」 最後が蚊の鳴くような声になってしまったのは勘弁して頂きたい。 「あ。はい」 俺の羞恥と動揺が移ったのか、あっしくんの返事も何か変だ。 「え、っと…じゃあ、その…付き合ってほしい」 「うん。よろしく、お願いします」 応えて、掴まれていた腕を滑らせ、そのまま手のひらを合わせるように手を繋いだ。お互いの体温が溶けていくような感じが、くすぐったくて嬉しい。 「…あっしくん。ひとつ、希望を叶えてもらいたいです」 「どうぞ」 いいんだ。何も聞かなくていいんだ。 「…ハグして」 「ん」 腕を広げてくれたので、何も躊躇わずあっしくんの背中に自分の腕を回した。あの時――告白してもらった次の日に――したかったこと。返事してないのにダメって思ってたけど、本当はこうしたかったんだから、もうずっと好きだったんだ。 少し高めの体温が気持ちいい。あとこの…締まった体がめちゃくちゃ頼もしい。 「…もう、『俺の彼氏』って言っていいんだね」 「それは俺のセリフだな」 「俺の彼氏がカッコいいです」 「ありがとう。俺の彼氏は可愛い」 「そうかなぁ」 「カッコいいところもあるけどな」 「俺の彼氏だって可愛いところもあるよ」 お互い同時に吹き出して、ひとしきり笑った。涙が出てきたのは、楽しかったからかな? 嬉しかったから、かな。 「ありがとう、七織」 「うん。俺も」 「好きだ」 「俺も、好き」 密やかに笑って、俺はそっとあっしくんの頬に唇をくっつけた。 「よし! じゃあプラネタリウム行こ!」 「は? ちょっと?」 「行くよ!」 「俺まだしてねぇけど」 「今されたら破裂するから! 後にして!」 「…『後』、な」 う〜ん、何か動揺して余計なこと言ったかも! まぁご想像通りその後のプラネタリウムはほとんど集中出来なかったけど、また来ようね、って2度目の約束が出来たから良かったかな。 それと、夏休みの約束も。 「ひまわり畑?」 「そ。七織、植物結構好きだろ」 「うん。好き。一面ひまわり畑かぁ…」 そこで俺はふと思い出した。告白された日の朝に見た夢。 黄色い海のような広い広いひまわり畑を誰かと手を繋いで歩いていた、温かくて幸せで、愛おしい夢。 ――そっか。あれは、あっしくんだったんだ。 「一緒に行くの楽しみだね」 そう言って満面の笑みを浮かべる俺の頬にキスを落として、あっしくんは嬉しそうに笑った。                    ☆あっしくんルートおしまい

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