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第119話

「…俺のこと、話してるの?」 「やっぱ事前に相談した方がよかった…? ごめん。あっくんには七織にちゃんと話せよって言われてたんだけど…う、嬉しくて…」 そんな顔されたらさぁ!! そんな…ちょっと顔赤らめてほにゃほにゃの笑顔見せられたらさぁ!! 文句言えない!! 好きだもん!! 「…こ、今回だけだからねっ」 そんで俺は何でこんなツンデレみたいな反応になる…! 似合わないだろ! 「うんっ! ありがとう!」 満面の、笑み…!! 眩しい…。 「あと、別に手は、繋いでも…いいよ」 どうしたらいいか分からなくて、人差し指を由音の小指に引っ掛けた。ありがとう、って優しい声で言って、由音は俺と指を絡ませるようにして手を繋いだ。 何か俺…初めてで、すごいドキドキしてる…。 手汗大丈夫かな。 「好きな子と手ぇ繋ぐとテンション上がるよね」 「…めちゃくちゃドキドキしてますけど俺は」 「え〜、何それ可愛い。俺もドキドキしてきちゃうじゃん」 「そんな感じの顔じゃない」 「顔で判断されてる? 好きな相手の可愛いとこ見せられたらドキドキするでしょ」 「…由音は俺のこと可愛いって言うけどさぁ」 「うん。毎日めちゃくちゃ可愛い」 そんなことないよ、とか言おうとしたのに。由音がそれはそれは嬉しそうな表情で言うから、言葉は続かなかった。 こんなキラキラ笑ってる由音の前で、ネガティブなことは言いたくなかった。 「…ありがとう」 「え?」 「俺も由音のこと、たまに可愛いって思う」 「え?」 「…好きだよ」 「ありがとう。俺も」 そう言って、つないだ手を持ち上げた由音は、俺の手の甲に優しくキスを落とした。 「そっ…それは見られてもいいとは言ってない!!」 「ごめん。しちゃったから手遅れ」 大丈夫だよ、誰もいないし。 カラリと笑う由音に、羞恥心はまぁいいかと萎んでいく。こういう大らかなところも好きなんだ。 「今度は先に言ってよね」 「キスするよ、って?」 「うん。…そしたら、多分断らないから。…多分ね」 「じゃあ今」 「後で! ここ、公道!」 「断らないんでしょ?」 「TPOはわきまえて!」 はぁい。と答えた由音は何だか嬉しそう。 「じゃあ後でしようね」 「…手加減してね」 俺はそう答えるのが精一杯で。 手加減してもらえたかどうかは内緒にさせてほしい…。                  おしまい

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