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2.天使様を研究させてもらえることになりました(シンテの物語)
より「天使さま」の研究をする為、やっと「天使さま」の所有者であるキリーンという王城に勤めている医官に渡りをつけることができた。
「初めまして、キリーンと申します。この度は天使研究の第一人者でいらっしゃるシンテ殿にお会いできて光栄です」
キリーンという人物は、背は高くほっそりとしているように見えたが、身体全体が筋肉質であるようだった。
「初めまして、キリーン殿。……第一人者などとおこがましい。シンテは研究に使っている名前です。本名はライと言います。そうお呼びください」
「ではライ殿、どうぞこちらへ。うちの天使さまをご紹介しましょう」
「ありがとうございます」
胸が躍った。とうとう天使さまに会うことができるのだ。
だが、キリーンが扉を開けた途端、とんでもない光景が見えて私は愕然とした。
「あっ、あっ、あっ、あぁんっ……客、がっ……」
「乳首をいじるぐらいいいじゃないですか。もっと育てさせてくださいよ」
「早くおっぱい出ないかなー」
なんと、如何にも逞しい者が上半身裸で、二人の騎士に乳首をいじられて喘いでいた。一人は乳首を捻り上げ、もう一人は乳首に吸い付いている。私はそのありえない光景に呆然とし、その場から動くことができなかった。
「どうしました? こちらがうちのかわいい天使さまですよ」
「そ、そうなのですか……」
私はどうにかそれだけ言った。
「彼は木こりでしてね。とても逞しくて素敵な身体をしているでしょう? 私たちは彼に夢中なのですよ」
「わ、私たち、ですか?」
「ええ、彼を専属で愛している騎士が三人おります。他に騎士団長も彼に夢中ですよ」
「そ、そうなのですね……」
確かに逞しくて、どれだけ抱いても彼ならば壊れないだろうと思われる身体つきをしている。だが……。
「ライ殿は天使さまを抱きたいのですよね? よろしければうちのクインをお貸ししますよ」
「あ、ありがとうございます……ですが……」
実のところ私自身は未だ使い物にならない。いろいろ調べたが病気ではないらしく、おそらく心因性ではないかと言われている。
そう、私のちんちんは物心ついた頃から勃起したことがないのだ。
でももしかして天使さまになら欲情するのではないかと、一縷の望みをかけて研究をしてきたのだが……。
「うちのクインは好みではありませんか?」
「……そういうことではないのです。実は、その……」
すごく言いづらかったが、相手は医官だ。もしかしたらなにか助言をもらえるかもしれない。
情けなくて泣きそうだったが、私はこのキリーンという医官に自分の身体の状態を話したのだった。
「……勃起しないのですか」
「病気などではないらしいのです」
「失礼ですがお歳は?」
「……25歳を過ぎてからは数えておりません」
「それは……ひょっとしませんか?」
「……え?」
キリーンは難しい顔をして私を見た。
まさか、と思った。
もしや、そんな、ばかな……。
「いえ、まだなってないはずです……」
「それならばいいのですが。なにか身体に異変を感じたら連絡をください。もし天使さまになってしまった場合、そのままにしておくと命に関わりますので」
「……その話は、本当なのですね」
「ええ、本当です。現に今乳首をいじられて喘いでるクインも、かつて死にかけでこちらに運び込まれましたから」
「そう、でしたか……あのう」
「はい」
「私は、このままでは天使になるしかないのでしょうか」
「……もしかしたらですが、抱かれることで勃起する場合もないとはいえません」
「そ、それは……」
イチモツを私の尻穴で受け入れることで勃起する? それで勃起した後は?
「そこに抱かれてもいいと言う者を呼んで、勃起したことを確認してから抱くというのはどうでしょう。もしかしたらそれで童貞ではなくなるかもしれません」
キリーンの言った内容はとんでもない話だった。だが現時点では、それ以外で童貞を捨てる方法はないように思われた。
「あの……もしそれが可能であれば、手伝っていただけるでしょうか」
「ええ、いくらでも手伝いますよ。童貞ということですから、王に声をかけましょう」
王! みなが愛らしいと、華奢で壊してしまいそうだという天使さまでもある王になんて……。
気持ちはすこぶる高揚したが、残念ながら私のモノはうんともすんとも言わなかった。
だがもし誰かのイチモツを受け入れて、私のモノが勃起したら王に相手をしていただけるだろうか。考えただけで鼻血が出そうだった。
「今日は、考えさせてください」
「はい、こちらはいつでもかまいません。ですが時間はあまりないものと考えられた方がいいと思います」
「はい、本日はありがとうございました。その……天使さまにもよろしくお伝えください」
「大丈夫ですよ。うちのクインは引く手あまたですから。騎士たちの恋人です」
「そうなのですね……」
さっそく家に戻り、今日知ったことをまとめた。そうして自分自身のことについて考えた。
明日にでも考えた方がいいかもしれない。いや、しかし……。
童貞を捨てられるかもしれない。だができないかもしれない。ああでも王にお相手をしていただけるかもしれない。
私の心は千々に乱れ、それから数日何も手につかなかった。
そうしてそのせいでなのか、ある日の朝私の身体は動かなくなった。
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