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第3話-1

 雪解け水をすくってひと口含んだ。  キンと冷たい水が棘のような鋭さで喉を刺す。 『桔梗』  直接頭のなかに語り掛ける声を聞いて、桔梗は顔を上げた。御稲荷さまの声だ。 『社に来なさい』 「はい……」  白耀は桔梗を訪ねて毎日のように社から出てくるが、御稲荷さまは滅多にそこから出られることはない。直接お世話をするのは桔梗の養父であるひふみで、桔梗は一年に数日顔を合わせるのがせいぜいだった。

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