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12/6 御堂くんはご用意済み?

(前回までのあらすじ:11月末から、俳優養成スクールの長編を連載中) -----  久しぶりに、雨が降っている。  憂うように窓の外を眺める御堂くんは、端的に言って、かっこいい。  僕の恋人だなんて信じられないなと思いながら、そっとそばに寄り、声をかけた。 「みーどうくんっ」 「ん? なんだ、君か」 「いま、小説のこと考えてたでしょ?」 「ああ……まあ、小説のことか君のことしか考えていないからな」 「ぶ!?」  不意打ちをくらい、思わずつんのめる。 「ちょ、っと、誰かに聞かれたらどうするの!」 「俺は別に、誰に聞かれてもいいが」  そう言う手元には、BL用のアイデアノート。 「あれ? 御堂くん、またBL考えてるの? いま連載中なのに」 「ああ。実は、年明けからまたミステリーの方が忙しくなるので、いまのうちに書き溜めておこうと思ってな。ついさっき1本完結した」 「ええっ!」  そんなそぶり、全然見せていなかったのに。  スマホを見せてもらうと、たしかに、全17話の新規作品が、下書きに保存されている。 「いま連載中の俳優スクールは、まもなく完結だ。その後少し間を置いて、ちょっととち狂った話を出す。こんなエロばかりの話は二度と書かないだろうから、貴重だぞ」 「とち狂った……?」 「我ながら、頭がおかしい。こんなもの掲載して、僕の作品ラインナップをぶち壊すのではないかと思ったくらいだ」  下書き保存したものの、掲載するかは死ぬほど悩んでいるらしい。  せっかく書いたのだし、気が変わらないことを祈るばかりだけれど。 「まあ、先のことはともかく、まずはいま連載中のものの結末を見届けてほしい」 「うん。楽しみにしてるよ」  窓の外を見ると、雨が弱まっていた。  よかった。下校までにはやみそうだ。  しかし御堂くんは、小雨を眺めながら、つまらなそうに頬杖をついている。 「どしたの?」 「いやあ? あいにく傘を持ち合わせていなかったので、雨が降っていたら、君の傘に入れてもらいたかったんだが。残念だ」  ぼんっと、顔から火を噴きそうだった。

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