5 / 8

12/14 御堂くんはお礼と予告

(前回までのあらすじ:とち狂った新作を出すか悩んでいた) -----  夜、眠る前。なんとなく寂しくなって、御堂くんに電話をかけた。 「もしもし」 『珍しいな、こんな時間にかけてくるのは』 「ごめんね、寝てた?」 『いや、ちょうど君のことを考えていた』 「う……!?」  思わず電話を取り落としそうになる。  こんなキザっぽいセリフも、御堂くんが言うとなんともさらりと聞こえて、恥ずかしさとうれしさがないまぜになる。 「あのっ、あのね、全部読み終わったよ。俳優養成スクールのやつ。面白かった」 『……そうか。楽しんでもらえたならよかった。読者さまからのリアクションもまもなく1,000に届きそうで、ありがたい限りだ』  ちょっとほっとしたような声。  御堂くんは、小説を書くのが大好きな割に、少し自信がなさそうなところもある。 「それで、前に言ってた『内容がとち狂ってて出すのを迷ってる』ってやつ。決まった?」 『ああ。悩みに悩んで、出すことにした。18(土)から連載する』 「わー! そうだよね、せっかく書いたんだもん。僕も読みたかったから。よかった」 『……』  反応がない。 「御堂くん?」 『…………いや。なんというか。き、嫌いにならないでくれ』 「へ? なにが?」 『君のことをこうしたい願望があるとか、こんなことを常に考えているというわけではないんだ』  僕がコメントを挟む間もなく、謎の言い訳が続く。 『本当は、短編集に載せる2〜3話のエロのつもりだったんだ。だからこんな、深みも心の機微も何もない情緒とモラルに欠ける話を作品リストに並べて世に出すのは果たしていいことなのか、心の底から何度も自問自答した結果、恥を晒して出すことに……』 「ぶ」  思わず噴き出すと、御堂くんは、ちょっと呆けたような声で言った 『な、なんだ?』 「あはは。そんな、そんなことで嫌いになるわけないでしょ。なに? 逆にハードル上がるよ。そんなに変な話なの?」 『ちがうんだ……いや。本当に、君に嫌われたくなくて』  また謎の言い訳が続く。  こんな御堂くんの早口は聞いたことがないから、だんだん面白くなってきてしまった。 「ふふ。分かったよ。絶対嫌いにならないって約束するから。それで、タイトルは?」 『悩める原くんのお話……だ』  ぷつりと電話が切れてしまった。  僕は呆気に取られて、黒いスマホ画面を見つめる。  なにそれ? まあいいか。  今週の土曜日には、分かることだ。  あした学校に行ったら、楽しみにしていると、ちゃんと伝えよう。

ともだちにシェアしよう!