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1/1 御堂くんの謹賀新年
「あけましておめでとう」
「かっっっ……こいぃ」
紋付き袴でやってきた御堂くんに、思わず見とれてしまった。
「ん? どうした?」
「あっ! えと、あけましておめでとう。今年もよろしくね……」
無駄に照れながら手を差し出す。
握手のつもりだったのだけど、御堂くんは、当たり前のようにカップル繋ぎをしてくれた。
恥ずかしくて、顔が熱くなる。
「御堂くんは、今年も小説を書きながら年を越したの?」
「ああ、毎年恒例だからな」
初詣はけっこうな人出で、しっかり手を繋いでいないとはぐれてしまいそうだった。
人とぶつかりそうになるたびに、抱き寄せるみたいに守ってくれて……もう、心臓が持たなさそう。
ドキドキしっぱなしでお賽銭箱の前までたどり着いたので、小銭を投げて、お祈りした。
――今年も、御堂くんの小説がたくさんの読者さんに読まれますように
ふと横を見ると、御堂くんは長いまつげを伏せ、長々お祈りしている。
顔を上げると、こちらに向いて、ほんのり笑った。
「御堂くんは何をお願いしたの?」
「ひとつは、君と楽しく居られるようにだな」
「あとは?」
「新作が間に合いますように、と」
「へえ〜、新作。え!? 新作!?」
ああそうだ、と、事もなげに言う。
どういうことかと聞けば、いま連載中のものは、本日1/1の20:00で終了らしい。
そして、1/2の20:00から、新作が始まる……と。
「全然知らなかった、新作書いてたなんて」
「ああ。3日前に書き始めたからな。書き溜めもほとんどない状態で、オチも決まらぬまま見切り発車する」
「ええ? 平気なの? むかしそれで自転車操業になって、大変なことになったよ?」
「まあ、なんとかなるだろう」
御堂くんは、ぎゅむっと僕の手を握る。
「勝利の女神様がついているからな」
新作はなんと、タイトル未定、表紙画像もまだ描いていないらしい。
あしたから連載なのに!
御堂くん、頑張って!
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