6 / 8

1/1 御堂くんの謹賀新年

「あけましておめでとう」 「かっっっ……こいぃ」  紋付き袴でやってきた御堂くんに、思わず見とれてしまった。 「ん? どうした?」 「あっ! えと、あけましておめでとう。今年もよろしくね……」  無駄に照れながら手を差し出す。  握手のつもりだったのだけど、御堂くんは、当たり前のようにカップル繋ぎをしてくれた。  恥ずかしくて、顔が熱くなる。 「御堂くんは、今年も小説を書きながら年を越したの?」 「ああ、毎年恒例だからな」  初詣はけっこうな人出で、しっかり手を繋いでいないとはぐれてしまいそうだった。  人とぶつかりそうになるたびに、抱き寄せるみたいに守ってくれて……もう、心臓が持たなさそう。  ドキドキしっぱなしでお賽銭箱の前までたどり着いたので、小銭を投げて、お祈りした。  ――今年も、御堂くんの小説がたくさんの読者さんに読まれますように  ふと横を見ると、御堂くんは長いまつげを伏せ、長々お祈りしている。  顔を上げると、こちらに向いて、ほんのり笑った。 「御堂くんは何をお願いしたの?」 「ひとつは、君と楽しく居られるようにだな」 「あとは?」 「新作が間に合いますように、と」 「へえ〜、新作。え!? 新作!?」  ああそうだ、と、事もなげに言う。  どういうことかと聞けば、いま連載中のものは、本日1/1の20:00で終了らしい。  そして、1/2の20:00から、新作が始まる……と。 「全然知らなかった、新作書いてたなんて」 「ああ。3日前に書き始めたからな。書き溜めもほとんどない状態で、オチも決まらぬまま見切り発車する」 「ええ? 平気なの? むかしそれで自転車操業になって、大変なことになったよ?」 「まあ、なんとかなるだろう」  御堂くんは、ぎゅむっと僕の手を握る。 「勝利の女神様がついているからな」  新作はなんと、タイトル未定、表紙画像もまだ描いていないらしい。  あしたから連載なのに!  御堂くん、頑張って!

ともだちにシェアしよう!