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第14話 忘れ形見

「暁宏に抱かれることを想像しながら、自分のをさわってたのかな」 「……はい」 秀一郎は動きを止める。朔哉を抱きしめ、くちづけをした。 「ふ、う……ん、んっ、ん……」 「……ん。朔哉くん。きみは本当に抵抗しないね。暁宏に抱かれたいのに、俺が相手でいいのかな?」 「はい、わたくしは西川家の執事です。……求められれば足を開くのが、生まれながらのしきたりです。秀一郎さま。わたくしたちは初めて抱かれるときに交わす言葉がございます」 秀一郎の頬に両手を添え、唇を重ねた。 唇で秀一郎の唇を挟んでから、ゆっくりと舌を入れる。できるだけ、丁寧に動かした。 「……この日が来るのをお待ちしておりました」 「朔哉くん……いくら掟とはいえ、そこまで言っちゃだめだ。本気にしちゃうから」 触れ合うだけのキスを交わしてから、秀一郎は朔哉の髪を梳いた。 「雪弥さんの忘れ形見がいると知ったから、もう俺は戻れない。きみの初めてが欲しくてたまらない……許してくれ」 朔哉は何も言わず、力強く秀一郎を抱きしめた。 それが答えだった。

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