帰り道、悠真はすっかりしょげて未緒に訊ねていた。 「未緒先輩、俺どうすれば上手く演じられるでしょうか？」 「上手くやろう、なんて思わないこと。かな？」 　そんなぁ、と情けない声を出す悠真を、未緒は笑った。 「ごめんごめん。ね、吉行くん。よかったら明後日、家へ来ない？」 「未緒先輩のお宅へ、ですか？」 　うん、と未緒はうなずいた。 「父がゴルフで一日家にいないんだ。存分に稽古できるよ」 「何だ、練習か……」 「何か言った？」 「いいえ！　ぜひ、未緒先輩の特訓、受けたいです！」 　本心を言えば、家に呼ばれての部屋デートを思い浮かべた悠真だ。 　この日は珍しく部活が休みで浮かれていた。 　しかし、そこにも未緒の特訓が入って来るとは！ （でも、未緒先輩と二人っきりになれるんだから、嬉しいかも♡） 　明後日の土曜日を、悠真は心待ちにしていた。