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第6話
未緒の家は、大きな一戸建てだった。
庭も広く、これなら大声を出しても近所迷惑にはならないだろう。
「お金持ちなんですね~」
「そんなこと、ないよ」
父はゴルフへ行った、という割には、玄関にクラブがもう1セット置いてある。
「僕も一緒に行く事にしてたんだけど、悠真くんの特訓の方が大切だから」
「す、すみません」
お茶くらい出すよ、と一度キッチンへ引っ込んだ未緒を待っていた悠真だったが、現れた彼を見て驚いた。
「先輩! その格好!?」
未緒は、舞台衣装の和服を身につけていた。
「これが、つうの姿だよ。吉行くん」
ぽかん、と悠真は未緒に見蕩れた。
すらりとたおやかな体の線が、すごく綺麗なのだ。
「本番ではこれに長髪のウィッグをつけるけど。似合うかな?」
悠真は無言で一生懸命首を縦に振っていたが、あることに気づいた。
「先輩、何か……、痩せましたか?」
「つうの役が決まってから、減量してるから」
そこまでやるのか、と悠真は感心した。
(だったら、俺も未緒先輩の相手役にふさわしい演技をしなきゃな!)
張り切る悠真だったが、なかなかにそれは難しかった。
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