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第4話
今日はデパートへ買い物。
中学生の時は学ランだったので高校指定のブレザーを買いに来たのだ。
これから成長期に入るため少し大きめにと定員さんに言われ祖父母と相談し、少し大きめな制服を試着してみた。
僕自身も背は伸びたいと思っているのでダボっとした上着、ズボンを鏡越しにみて、手首足首が見えるようになれたらなんて思っていた。
祖母のきみ子が
「1回見せてごらん?」と言うので
試着室のカーテンを開け出てみる。
「こうゆうものかしら?大きすぎないかしら?」
隣に立っていた祖父の清志も
「う~ん。。身長や体重が増えるのはこれからじゃが。。悠那はちと華奢なんかのぉ。。」
思いっきし渋い顔されてるッッ!!
そんなにサイズ合ってない??とさすがに僕も焦ってきた。
先程会話してた定員さんがサイズがキツかった為にと今来てる物より大きめのものと
小さいサイズ両方もって小走りしてきた。
「いかがでしょうか?私もサイズ確認してもよろしいですか?」
「はい。私達からみても緩すぎるような気がするんですが。。」
「そうじゃなぁ。成長期が来て制服キツくなりそうなら、またココに来るのはダメかのぉ?」
「え?お客様?制服のサイズ見ますね?!」
「はい。お願いします。」
(定員さん、上から下から何回も見てる。似合わないからか?そんなに大きかったか?)
「お客様、申し訳ございません。身長に合わせてお試し頂いたのですが。。身体が細いので腕とスボンが合ってませんので。。御家族の皆様もお時間が宜しければ全身のサイズを測らせて頂けませんか?」
「そうしてください。清志さんもいいですよね?」
「ああ、構わないよ。ちゃんと見てもらいなさい。」
家族だって…。
ああ、なんて暖かい言葉なんだろう。
本当の家族ではあるのに、両親と出かけた記憶が曖昧で良く思い出せない。
2月中旬でまだまだ寒い季節だが心が暖かい。
周りからしたら普通の会話だろう。
けれどこの普通が当たり前じゃなかった僕は
この状況を少し嬉しく思う。
祖父母と「両親」がいたらもっと楽しかったのだろうか、と暖かくも寂しい気持ちになった。
けれどクヨクヨしてはダメだ。中学校はまだ自分を表に出せてない。高校は楽しく過ごしたい。同じΩ性の子と仲良くしたいし、違う性別の人でも仲良くしたい。
霊感に関しては祖母に鍛えてもらい見えなくなる方法はない訳では無い。けれどそれには訓練が必要。逆に生きてる人か死んでる人か判別し、死んでる人が見えたのなら目を合わさないようにするとアドバイスをくれた。そしてこれから除霊もできるようにレベルアップするようにと知り合いの霊媒師さんを紹介してくれるとの事。
新しい挑戦は好きだ。地味で暗かった僕を祖父母は、無償の愛を注いでくれている。
少しずつ成長していつか恩返ししたい。
フワッとした決意だけど頑張れそうな気がした。
寸法してもらい、1番近いサイズの制服を来たが今度は袖と裾が短くて合わない。
オーダメイドだと始業式近いのもあって時間の約束が出来ない。
袖と裾を体に合わせて、身体の部分は成長と共にどうにかなるだろうと話し合い今着ているダボダボ制服に落ち着いた。
祖母のきみ子が
「何回も試着して疲れたでしょ。早く家に帰って甘い物食べたいわ~」
祖父の清志も
「羊羹がまだあったじゃろ。それを食べるか?」
「今日は洋菓子の気分。ね、悠那?」
「え?あ。うん。ケーキ食べたいかな。」
「はい!決まり~!行きましょう。」
祖父の清志と顔を合わせ、思わず吹き出した。祖母は若い。色んな人と会話するから頭に入れる情報だけではなく見た目も気にするから若くなる。と本人談(笑)
そんな祖母の身の回りやスケジュール、予約の電話などを受け持っている祖父も何だかんだ若い。
そんな二人を見て相思相愛が頭に浮かんだ。
人を愛するってどういう気持ちなんだろう。
自分の体質が嫌いなのに、他人を愛せるだろうか。そもそも愛や、恋ってなんだろうか。もう少し大人になったら分かるのかな。
これから色んな感情や体験をするのに期待が膨らむけれどその反面、この特殊な身体を受け入れてもらえるのか不安も出てくる。
当たって砕けろ精神だな。
祖父が教えてくれた言葉。わからない事にクヨクヨするより目の前にある壁を乗り越えていれば自ずと分からない事がわかるようになる。
つまりは明日明後日の晩御飯を考えて、色んな料理名浮かべても、想像だからあれもこれもと纏まらない。なら今日の晩御飯を美味しく食べるのに集中する事。
なのだそう。
「悠那?」
名前を呼ばれてハッとした。
祖父母が自分の前に立っているそして、二人とも手を出してる。
「ごめんね。晩御飯の事考えてた。」
そう誤魔化して右手で祖母の手を
左手で、祖父の手を握りしめ駐車場までの道のりを歩いて帰った。
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