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第5話
祖母の勧めで隣町の高校より市内の山にある高校へ入学した。中学生の時担任の先生から白波瀬の実力なら山の高校、隣町の高校の2つがおすすめと。
山の高校の方が偏差値も高いが、一番の理由は徒歩でいける!
そして隣町の高校は電車を使うけれど、外国人と異文化交流を積極的に取り入れており、いい刺激が挑める高校。
という事で、その日のうちに同じ先祖人の祖母に相談してみた。
パンフレットを両手に持ちながら
「きみ子さん。高校入試の話なんだけどちょっといい?」
「大丈夫よ。」
「近くの山の高校と、隣町の高校の2つを紹介されてね。学費の事もあるから相談したくて。これパンフレットと学費が書いてある用紙」
「山の高校に行けるならそっちがいいわ。学費の事は心配しないで。」
「なんで山の高校なの?」
「んー?悠那のね体質に合ってると思ったの。それに偶然より、必然なのかしら幹部会で山の高校に同じ先祖人の同級生がいる事がわかったの。悠那含めて4人も!男の子だから仲良く出来るといいわね。」
「そうなんだ!3人も先祖人が。いい人だといいなぁ。」
少しの期待と、大きな不安が悠那を包み込んだ。今度こそ上手くやらないと居場所がなくなる事と、Ωという特殊な身体が何処まで受け入れてもらえるのか今の悠那には経験値が足りないゆえに色々考えてしまう。
きっと当たって砕けろ精神ならどんなに楽かと自分でも嫌になる。
とうとう明日は高校の始業式。
祖父母も参加してくれるというので更に緊張している。ベットに入り眠ろうとするも学校に馴染めなかったらどうしようなどと心配になってきた。
ハンガーに掛けた制服をみて「きっと大丈夫だよね」と小声で独り言つぶやいてみる。
もちろん返って来る声もないが。
22時を過ぎいつの間にか、瞼が下がり眠りについていた。
――――――――
祖父母宅から山の中腹にある学校までは歩いて20分~30分くらいで、住宅街から大きい道路に出て、山へまっすぐ伸びてる。
大きい道路の道沿いにコンビニエンスストア、お弁当屋さん、パン屋さんなどあり分かりやすい道になっている。
今日は始業式なのもあり、制服きた人とスーツやワンピース、着物など着飾った人達がたくさんいて皆山へ向かっていくので悠那達もその流れに乗っていく。
急な坂ではないけれど、平坦ではないため祖母のきみ子が
「久しぶりにこの高校へ来たけどっっ。はぁ。ダメねぇ。はぁ。運動不足だわ。」
「そうだねぇ。私も少し膝がねぇ。。」
祖父の清志も中学校の校門へついた途端に少しへばっているようだ。
「きみ子さん、清志さんごめんね。」
へばっている2人をみて何だか申し訳なくなってきてしまって謝罪を口にする。
「何言ってるの!こんな目出度い日なのに。謝らないでちょうだい。少し清志さんと散歩する日増やしましょう。」
「そうだよ。悠那が高校生になった大事な日なんだ。きみ子さんと少し体力つけないとね」
しかし、息が上がっている2人をみておろおろしていると。
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。始業式の体育館はあちらにございます青い屋根の建物です。入口にて名前の確認と何組なのか伝えますのでゆっくりとお進み下さい。」
スーツを着た中年の男性が拡張器で説明している。
ぞろぞろと周りにいた保護者と新入生達が青い屋根の体育館へ向かう。
悠那達も混ざり、入口へ向かった。
体育館の入口前に受付と紙が貼られた長机が道の両側に2つずつ置かれており、右側に苗字のあ~か。隣にはさ~た。
左側にはな~は。隣にはま、や、ら、わ。と書かれた紙も貼られていた。
「次の方どうぞ~」
「し、白波瀬、悠那です。」
「し、し~あった。はい。ご入学おめでとうございます。こちらの花を左胸のポケットへ。花の後ろに安全ピンがついてるので、怪我に気をつけて刺してください。それと白波瀬君は1年B組なので入って左側に席がございます。」
「椅子の後ろにフルネーム書いてある紙が貼られてる席へ座って下さいね」
「あ、ありがとうございます。」
三十代半ばの女性教師だろうか人慣れた口調と優しい笑顔だった。
けれど悠那には緊張する人間だった。
«母親»の年齢に近い女の人は緊張する。
自然ときみ子に目配せする。
きみ子は目線に気づき軽く頷いた。
ほっと胸を撫で下ろす。
まだ母親の存在は悠那から抜けれない。意識してしまう。他人とわかっていても睨まれる、殴られるかも、と無意識に警戒する。
体育館に入り自分の席を探した。少し変わった苗字のお陰かすぐ見つかりきみ子達と別れた。
そわそわしながら席に座り特に知り合いもいないので下を向いて座っていた。
ぼーっとしていたのかマイクがきちんと電源入ってるかポンポンと叩く音で意識が戻る。
「え~新入生の皆さんご入学おめでとうございます。これからこちらの壁に貼ってある紙に書かれてる通りに右から左へ順番に行ないます。」
「校歌に関しては放送で流しますので雰囲気だけでも覚えて下さいね。それでは始めたいと思います。」
「新入生起立!」
そこから流るように時は進みいつの間にか入学式は終わったようだ。
立ったり座ったり、礼をしたりと少し忙しない感じだったけど無事に終わって良かった。
今日はそのまま帰宅となり、明日は担任の顔合わせ、自己紹介などあるらしい。自己紹介…苦手だ。楽しく過ごすというより無難に目立たない立ち位置でいい。
ただでさえ変な体質でΩ。
「きみ子さん。少し疲れたからひと休みしていい?」
「いいわよ。晩御飯できたら呼ぶから。」
制服を脱いでハンガーにかけ、部屋着に着替えた僕はすぐさまベッドに横になる。
発情期や番の説明は受けた。
めんどくさい身体にめんどくさい性。
霊感とΩ。
βにならないかな。
あぁ。いいや、もう寝よう。
色んな感情がごちゃ混ぜになっていたが答えが見つかる訳でもないので、そのまま目を閉じた。寝ればその間は無になれる。
自己紹介。何も紹介するものなんてないのに。明日から憂鬱だ。
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