5 / 275

ActⅠ Scene 1 : 探偵カルヴィン・ゲリー。④

 けれどもたった数日で遺体が白骨化するなんて聞いたこともない。  ――この土地に住む人々の殆どがキリストを指示している。だから人々は皆、この不可解すぎる事件を、"人格性がある超自然的存在"として恐れられているサタンの呪いだと信じて疑わなかった。  政府さえもサタンの呪いを恐れ、シャーリーンの一件以来、同じような事件が起こらないこともあってか、この件は世間から忘れ去られてしまった。  しかしこの世に残された、たったひとりの家族さえも奪われたカルヴィンはそれを良しとはしなかった。だからカルヴィンは保護してくれたデイル夫妻の庇護から離れ、屋敷を出て探偵家業を開始したのだ。  すべては姉、シャーリーンの命を奪った犯人を突き止めるために――。  カルヴィンがデイル家から離れたのは、彼らに余計な火の粉を被らせないためだった。  探偵は常に危険と隣り合わせになる。自分を引き取ってくれた心優しい彼らを危険に晒すような真似だけはしたくない。カルヴィンが知っている人がこの世界からいなくなるのは、もう懲り懲りだった。  そんなデイル夫妻はカルヴィンに生活費の殆どを仕送りしてくれている。カルヴィンが二十四になる今もずっと……。  彼らの生活もけっして裕福ではない。当然、カルヴィンがそう易々と使えるはずもなく、生活費は探偵として働いた稼ぎでなんとか生活を維持していた。  そういうこともあってか、毎日二度の食事は容易に手に入るじゃが芋と水で飢えを凌いでいる。

ともだちにシェアしよう!