7 / 275
ActⅠ Scene 1 : 探偵カルヴィン・ゲリー。⑥
こうやって身だしなみを整えたカルヴィンは、ようやく朝食に取り掛かる。
蒸したじゃが芋を頬張った。
美味いかどうかはさておき、蒸したじゃが芋をいくらかかじって腹を満たしていると、ドアに取り付けられた呼び鈴が鳴った。
壁に取り付けてある柱時計に目を配れば、時刻はまだ午前六時を少し過ぎたあたりだ。クライアントにしては早すぎる。
今時分、いったい誰だろうか。
カルヴィンは自分の身形も気にせずに、じゃが芋を手にしたままドアを開けた。
――ああ、最悪だ。
カルヴィンは目の前に立っている人物を見るなり、眉間に深い皺を刻ませた。
玄関先に立っていたのはひとりの男性だ。
彼の年齢はカルヴィンより三歳年上の二十七。はち切れんばかりのたくましい肉体美を見せつけるかのように、今流行りのタータンチェックのラウンジスーツを着こなしている。
マート・トマス。
カルヴィンはあからさまに嫌な顔をすると小さく呻いた。
《Scene 1 : 探偵カルヴィン・ゲリー。/完》
ともだちにシェアしよう!