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ActⅠ Scene 2 : 隣人はエリート探偵。①
「やあ、ダーリン。今日も一段と美しい。それに今朝は随分と色っぽいね」
マート・トマスは自慢の白い歯を見せつけた。彼はたいそうご満悦気味にバリトンのきいた声でそう言った。
しまった!
皮肉にもマートの発言により、カルヴィンは自分が今、まだドロワーズにシャツといった寝間着でいることに気が付いた。
おかげでダーリンという言葉に反応できず、それどころか自分の無防備な姿を見せてしまった。
羞恥を覚えたカルヴィンは固まってしまう。
だからマートが次にどういう行動に出るのかさえも予測できなかった。
マートは身を屈めるとカルヴィンが手にしているじゃが芋に視線を移した。それからじゃが芋を掴むと口の中に放り込んだ。
「なにすっ!」
カルヴィンが抗議の声を上げるのは遅すぎた。貴重な二食のうちの一食分の食料が目の前にいる傲慢な男によって失われる。
その彼は――といえば、不服そうだ。
マートがカルヴィンから奪ったじゃが芋を咀嚼 するたび、眉間にいっそう深い皺が刻まれていく。
そして残りのじゃが芋を噛み砕いた後、彼は静かに口を開いた。
「不味い。君はまだこんなものを口にしているのか? 大人しくぼくのものになれば、今よりもずっと良いものを食べさせてやると言っているだろう? それなのにいつまで経っても君は首を縦に振ろうとしないじゃないか。いったいぼくのどこが不満なんだ?」
なんでもマートはカルヴィンに一目惚れをしたらしい。顔を合わせるたびにこうやって口説いてくるからたまらない。
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