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ActⅠ Scene 2 : 隣人はエリート探偵。②
彼は自信に満ち溢れた男性だった。
それもそのはず、マート・トマスは爵位こそ持ってはいないがかなりの金持ちで、父親は法廷弁護士をしていた。
そして彼もまた、個人の事務所を構えるほど遣り手の探偵だった。
彼はカルヴィンが住む借家と道路とを挟んだ向かい側の大きな屋敷で個別に事務所を構えている。おかげで彼が仕事のある日は決まってカルヴィンの元へやってくる始末だ。
カルヴィンはマートが苦手だった。
その理由は顔を合わせるたびに口説いてくるからというのも要因のひとつではあるが、それだけではない。
マートは女性に絶大な人気を誇り、誌面には常に彼の名が取り上げられている。ハンサムな探偵として巷ではとても有名だった。
彼が自分の容姿を武器のひとつにしているのも頷ける。
短く刈り込まれたプラチナブロンドに頭ひとつ分高い身長。涼しい目元とふっくらとした鼻翼 。男らしい筋肉質な胸板と引き締まった肉体。
見た目と同じく鍛え上げられた躰は武術に長けている。それは道端で貴婦人に詰め寄る不貞の輩を打ちのめす勇ましい姿を何度も目にするほどに――。
それに比べて自分はどうだろう。
麦畑を思わせるブロンドに二重の大きな翡翠色の目。日焼け知らずのきめ細やかな透き通った肌。すらりとした足に年頃の男性よりも少し低めの身長と、どんなに鍛えようと努力しても割れない腹筋。骨ばかりが目立つ華奢な躰。
そしてとどめは、ひげだ。
同性愛者の大半は、ひげをすべて剃っている。
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