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ActⅠ Scene 3 : 持ち前の運動神経を試されるとき。④

 いつまでも屁っ放り腰のまま歩いていたのがいけなかった。鉛のように重くなっている足が恐怖に絡め取られてしまった。おかげで地面に埋まった大きな石に躓き、華奢な躰は石畳の切れ端でぱっくりと口を開けている闇へと吸い込まれていく。  危機感を帯びた悲鳴と一緒に夜の闇へと真っ逆さまに転げ落ちた。  鈍い音と悲鳴が静かな辺り一帯に響き渡る。オイルランプがカラカラと音を立て、落ちていく。その後を追うようにしてカルヴィンも木の幹に躰のあちこちを打ち付けながら転がり落ち、視界が開けたやや平坦な土壌の上でようやく止まった。  カルヴィンは武術全般苦手ではあるが、探偵としてやっていくために、なんとか護身術は身に着けている。そしてさらに幸いなことに、枯葉がクッションとなり、腕や足に擦り傷と打ち身を負っただけで済んだ。  しかし――。  見上げると傾斜に覆われている。随分下まで落ちたらしい。頭上では木の枝々が張り巡らされていた。  ずっと上の方から斜面を転げ落ちたおかげでデール夫妻から買ってもらったばかりのスーツは泥だらけだ。 「ああ、もうっ!」  カルヴィンは自分の運動神経の無さに苛立ちながら、地面に転がっている今まさに炎が消え入りそうなオイルランプを拾い上げた。  いくらか毒づき、躰じゅうに付いた泥や砂埃なんかを手で払い除けながら重い腰を起こせば、ほんの少し前方に動く人影が見えた。 「誰だ、そこにいるのは!!」

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