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ActⅠ Scene 3 : 持ち前の運動神経を試されるとき。⑤

 動く影に力なく揺れるランプを照らせば、青白く光る二つの目が浮かび上がる。  そこにいたのは年の頃なら三十前後の男性だった。  はっきりとしない視界でも容易にわかるくらい、彼はとてもハンサムだった。  後ろに撫でつけた襟足までの短い黒髪に、鋭い眼差し。整った双眸。カルヴィンのように細身ではないが、マートのように筋肉質でもない。服の上からでもわかる若さゆえの引き締まった力強い肉体はチュニックとジレの上からジュストコールを纏っていてもわかる。  長い足にぴったりと張り付くようなスラックスと底が厚いブーツ。その姿はまるで闇に溶け込むかのようだ。白のジレとチュニック以外はすべて、漆黒色で統一されていた。  今時分にこんな場所をうろつくなんてどう見ても妖しすぎる。しかも彼の服装はどこからどう見てもこの場に赴く格好ではない。  もしや彼もカルヴィン同様、転げ落ちたのだろうか。――いや、そんなことはなさそうだ。彼の着ている洋服のすべてが綺麗なままだ。カルヴィンのように腕や膝の部分が木々の幹や地面に叩きつけられた痕跡が見当たらない。  いったい彼はこんな道から外れた人気のない場所で何をしているのだろうか。  カルヴィンは目を細め、何気なくランプをうろつかせ、男性の足下を照らした。  ――その瞬間、カルヴィンは自分の目を疑った。  それというのも、彼の足下に白骨化した遺体があったからだ。骨ばかりの遺体が身に着けている真新しい桃色のドレス。

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