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ActⅠ Scene 3 : 持ち前の運動神経を試されるとき。③

 それでも、どうにか犯人をこの手で捕まえたい。  殺されたシャーリーンたちの無念を晴らしたい。  そして願わくば、第三の犠牲者が現れる前にどうにかこの事件を解決したい。  肩からだらしなくぶら下がっている手を握る。  ――とはいうものの、こんなに暗い視界では何もできない。  頼りになる灯りといえば、頭上に輝く星々とカルヴィンが持っているオイルランプのみなのだ。  せめて今日が新月でなければ――。  月が出ている時に出直した方が得策だ。  今夜はここまでとしよう。カルヴィンは仕方なく捜査を切り上げることにして帰路へと向かっていた。  あと小一時間で家に着く。  見慣れた景色ではあるものの、周囲は薄暗い上に舗装された石畳は細く、蛇行を繰り返している。  人気のない裏路地は何かが出そうなほど気味が悪い。怖くないと言えば嘘になる。  だからカルヴィンの足はずっしりと鉛のように重い。屁っ放り腰のまま歩く膝はわなわなと小刻みに震えるばかりだ。  早く家に帰ろうと気持ちばかりが焦る。  自慢にもならないが、カルヴィンは運動能力も反射神経も人並み以下である。加えて力もそこそこだ。責任感や義務感は人一倍あるものの、探偵としての腕もまだまだだ。弾力のある筋肉を持ち、体力共に探偵としても豪腕なマートには到底辿り着けそうにもない。  不気味な静寂の中、一陣の風が吹き、さわさわと木々の枝が揺れる。  たったそれだけでもカルヴィンの胃がひっくり返りそうになる。  そしてカルヴィンは持ち前の運動神経を発揮してしまう。

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