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ActⅠ Scene 5 : 潜入! 賭博クラブ。③

 それから少し離れたテーブルには小腹が空いた時にいつでも啄むことができるよう、キッシュやサラダバーが設けられ、バーカウンターではそれこそ庶民が滅多に味わえない高級ワインや果物の数々が用意してあった。  その日、初めて彼が経営するクラブに赴いたカルヴィンはひとり、バーカウンターでワインを|嗜《たしな》んでいた。――とはいえ、カルヴィンは非情に酒に弱かった。おかげですぐに顔が赤くなるし、判断力も鈍ってしまう。ワインボトルの三分の一も飲めないほどだった。  なにしろカルヴィンには、“クリフォード・ウォルターを調べる“という使命がある。  なにがなんでも、ここで酔うわけにはいかない。  酒が苦手なら賭博をすればいい。しかし真面目で曲がったことが大嫌いなカルヴィンには賭け事は不向きだ。自慢ではないが、生まれてこの方、賭け事をしたことがない。だからこういう場所にやって来てもどうやって遊べばいいのかさえもわからない。それに一般人の自分はこのクラブに入るのがやっとで散財する金もない。  カルヴィンとしては自分の身勝手な行動でデール夫妻には迷惑はかけられないし、ここで財産をすべて使い果たすことだけは避けたかった。  とはいえ、このクラブに乗り込んで何も頼まなければかえって怪しまれるのも事実だ。だからあくまでもワインを少しずつ、時間をかけてグラスを傾けていた。  それに、店内の右側に位置しているバーカウンターは周囲の空気に呑まれることなく、この賭博クラブの全貌がはっきりと見て取れる。彼を探すには打って付けの場所だった。

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