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ActⅠ Scene 5 : 潜入! 賭博クラブ。④
――さて、クリフォード・ウォルターはいったいどこにいるだろうか。
カルヴィンが周囲を目ざとく確認していく中、バーカウンターのこちら側に客たちの視線が集まりつつあった。
賭博クラブは紳士の憩いの場だ。よって、視線を向けてくるのも当然同性だ。
彼らは皆、酒に酔っているのだろう。目元を赤らめ、熱が隠った視線を寄越しにかかる。カルヴィンに話しかけるべきかどうか迷っているようだ。
それというのもすべて、この中性的な顔立ちが悪い。
麦畑を思わせるブロンドに二重の大きな翡翠の目。日焼け知らずの極め細やかな透き通った肌と華奢な腰からすらりと伸びた肢体。その容姿は当時、街では美女として人気だったシャーリーンに負けず劣らずで、幼い頃から女性より男性に言い寄られることの方が多かった。
しかし今のカルヴィンにとって、この状況は非情に拙い。
今は探偵として動いている。下手に目立ってしまえば自分はクリフォードに気取られる可能性がある。なにせカルヴィンは一昨日前、彼と出会っている。当然顔も見られただろうし、自分が何者であるかも名乗ってしまった。
いや、しかし彼は伯爵の地位をもっている。この賭博クラブはもちろんのこと、屋敷のやりくりだってある。一日に何十人と挨拶を交わさねばならない多忙な彼が、たかだか一般庶民一人を――しかも薄暗い夜に出会った男の顔と素性をわざわざ記憶しているだろうか。
カルヴィンは尻込みしてしまう臆病者の自分を叱咤すると気を取り直した。
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