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ActⅠ Scene 5 : 潜入! 賭博クラブ。⑥
カルヴィンは未だ賭博クラブのオーナーを見つけられず、内心焦っていた。
その上で、この厄介な酔っぱらいをどうにかしないといけない。
けれどもカルヴィンはこういった輩の応対には慣れきっていた。
酔っぱらいは相手にしない方が得策だ。この対処法は長年の経験から得たものだ。
カルヴィンは言い寄ってくる男に見向きもしないまま、背後に回った手を振り払う。するとご満悦気味だった男の態度が一変した。
男の火照った顔は赤黒い血色になり、先ほどの甘い囁きとは打って変わって汚い言葉でカルヴィンを罵りはじめる。
しかも男はそれだけでは飽きたらず、掴みかかってくる始末だ。
いつもならどうにかなるこの惨事は、生憎この状況においては違った。
おかげでカルヴィンはあっという間に注目を浴びてしまった。これではクリフォード・ウォルターを探るどころではない。
そしてさらに、深刻な事態に拍車が掛かった。
――ああ、なんということだろう。カルヴィンは人知れず舌打ちした。
運が悪いことに、クリフォードが今になって現れたのだ。
それはまるで、カルヴィンのこの状況を見計らったかのような登場だった。彼はどうやら外出していたらしい。堂々たる威厳と風格をもって玄関ホールに立っていた。
重厚感のあるラウンジスーツを着こなしている彼は、ワイン色のネクタイと襟がないノーカラーのV字のジレがたくましい胸板を強調させ、引き締まった躰にぴったり張り付くようなダークグレーのスーツがスマートなシルエットを作り出す。
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