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ActⅠ Scene 5 : 潜入! 賭博クラブ。⑧
その彼でもクリフォードの美しさには叶わない。彼の動作も、容姿も、すべてが優雅だ。クリフォード・ウォルターには人を惹きつける何かがある。
カルヴィンは人知れずロマの支配人とクリフォードを比較していたのだ。
クリフォードに魅了されている自分に気がついてはっとした。
彼は支配人といくらか相づちを打ち、会話している。
カルヴィンは男に胸ぐらを掴まれながらもクリフォードと支配人のやり取りを盗み見る。
――ふと目が合った。途端に、カルヴィンの背筋に痺れが走る。躰の芯から熱が宿り、全身に流れ込んでくるのがわかる。
躰が熱い。
自分はいったいどうしてしまったのだろう。
こうしている間にも満月のように青い目がカルヴィンを射貫いている。視線が重なった、たったそれだけのこと。
なのにカルヴィンの躰が彼を求めて疼きはじめる。同時に居たたまれない気分にもさせられた。
こうしている今も恰幅のいい男はアルコールの匂いを口から吐き出し、何やら怒鳴っている。けれどもカルヴィンの耳には届かない。自分を罵る声は右から左へと抜けていく――。
あるのは彼の視線と熱をもち疼く躰のみ、だ。
彼の視線に射貫かれた躰は金縛りにあったかのように動けない。
自分はどうするべきなのだろうか。
うまく思考が働かない。
すらりと伸びた長い足がこちらへと向かって来る。
ここで彼に捕まっては元も子もない。一刻も早くここから立ち去るべきだと本能が告げている。けれども美しいクリフォードから目を離すことができない。
不覚にも、カルヴィンの目は彼の洗練された容姿に釘付けだ。そのカルヴィンに、男はとうとう立ち上がった。
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