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ActⅠ Scene 6 : 見慣れない客。⑥
「君が犯人? まともに食事すらできない君が? ――いやいや、奴より君の方がずっと適任だ。なかなか見る目があるじゃないか」
クリフォードは、けたけたと面白可笑しそうに笑う支配人をひと睨みしてから軽く首を振った。
未だ腹を抱えて笑っている支配人を尻目に、あからさまに大きなため息をついた後、両手を上げて降参だと意思表示する。
「おれは子爵だぞ? お前よりはずっと位は上だ。そのおれが、わざわざ格下のお前に目をかけてやったのになんだその態度は! 無礼をはたらくなんぞ許さんぞ!」
すると突如としていっそう大きな怒鳴り声がバーカウンターから聞こえた。
クリフォードとティムがそうこうしている間にも、傲慢極まりない下劣な男は一昨日前に出会した青年の首根っこを掴んでいる。男は今にも殴りかかりそうな剣幕だった。
「いいか? 格下のお前はおれに刃向かうなんざ許されない! 金も地位もあるおれから言わせれば、お前はせいぜいその可愛い躰をひらいて抱かれるしかない薄汚い男娼にすぎないんだよ!」
男は、クリフォードに自ら探偵だと名乗った青年を汚い言葉で罵る。
男娼と罵られた彼はどうすればいいのか困惑気味だ。
知り合いでもない男性客は、ただの推測でありとあらゆる汚い言葉で罵り続けている。尚も止まらない男の暴言が刃物と化し、青年の心を抉る。彼の顔面は蒼白し、唇を噛みしめ恥辱に堪えている。
その姿を見た瞬間、クリフォードは怒りを覚えた。
なぜだろう、怒鳴り散らし、汚い言葉で罵る男がとんでもなく異臭を放つ化け物のように思えてくるのは――。
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