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ActⅠ Scene 7 : 完璧な口づけ。①

「さあ来い! このおれが直々にベッドでの所作をたっぷり教え込んでやる!」  カルヴィンと恰幅の良い男は初対面であるにもかかわらず、まるで自分の所有物であるかのようにカルヴィンの腕を強引に掴み上げた。そうして男は無理矢理椅子から立ち上がらせ、出入り口に向かってカルヴィンを引き摺っていく。 「い、いやだっ!」  冗談ではない。カルヴィンは世間を騒がせている連続殺人の犯人を突き止めるためにここへ来ている。  男を引っかけに来たわけでもないし、況してやこんな傲慢な相手に抱かれたくもない。  何より、自分は同性愛者ではない。自分と同じ性を持つ男に抱かれるなんて屈辱以外の何ものでもない。  シャーリーンを死に追いやった犯人の手がかりになりそうな重要人物をようやく捜し当て、ここまで辿り着いたのに、これではすべてが水の泡と化してしまう。  それに、ああどうしよう。自分はすっかり騒ぎの中心にいる。一昨日前ではカルヴィンの素性も顔も覚えていないにしろ、この一件でクリフォードには顔を覚えられたことだろう。次からの潜入はかなり難しくなる。  いや、それよりもまずは自分勝手で傲慢なこの男をどうにかしなければならない。  それなのに……。  男の腕を引き抜けない。  腰に回っているじっとりとした脂汗をまとった腕の感触が気持ち悪い。  もちろん、危険を伴う探偵として多少の護身術なら身につけている。――とはいうものの、今はこの男に操を奪われてしまうかもしれない恐怖に駆られているおかげで頭の中が真っ白になる。

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