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ActⅠ Scene 7 : 完璧な口づけ。④
「それから君も、だ。ここは君のような子供が来るべき場所ではない。無駄に背伸びなんてするからこうなるんだ」
クリフォードはしんと静まり返った賭博クラブの扉を閉めるなり、呆然と立ち尽くしたままのカルヴィンに向けてそう言った。
「ぼくを子供扱いするな!」
カルヴィンは彼の腕を振り解き、声を荒げた。
たしかに、カルヴィンはクリフォードよりもずっと年下だし童顔だ。けれど四年も前に成人している。子供扱いされるのは心外だ。
それに自分は探偵でクリフォード・ウォルターは人殺し――とはまだ断定できないが、白骨遺体事件と何らかの関わりがあることには違いない。
世間からの噂話もあるし彼が犯人だと疑う証拠は調べればすぐに上がってくるだろう。
そんな相手に助けられるなんて!
自分だって護身術のひとつやふたつは身につけている。いくらパニックになっていたとしても、絶対に振り切れた――はずだ。
カルヴィンは苛立ちをあらわにしてクリフォードに噛み付いた。
「ほぅ?」
カルヴィンが睨めば、クリフォードの片眉がひくついた。
時刻は午前零時を回っている。夜はいっそう闇が広がっている。彼が経営する賭博クラブから出されたとはいえ、まだ敷地内にいる。大きな敷地内に外灯がいくつも連なり、灯っているおかげで彼の表情もはっきりと見てとれた。
彼の口角はカルヴィンを小馬鹿にするように上がっている。明らかに不愉快そうだ。
闇の中で浮かび上がる微笑。
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