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ActⅡ Scene 1 : 出遭い。④
たしかに、いくら華奢な体型とはいっても骨ばかりが目立つ男の躰で女性に成りきるにはかなり無理がある。
性を偽り、会場まで乗り込むことができたのが奇跡に近い。
ああ、どうしよう。彼がこちらに向かって来る。
カルヴィンの胃が縮こまる。
クリフォードとの距離はそんなに遠くはないが、幸い周囲には貴婦人たちが立ちはだかっている。おかげで彼がここまでやって来るにはまだ随分時間がかかりそうだ。
クリフォード・ウォルターは、世間では"呪われた血族"と噂され、気味悪がられている。
――とはいうものの、彼の美しさはその噂話さえも呑み込んでしまうほどの威力があった。
鋭い双眸に高い鼻梁。無駄な筋肉がない引き締まった肉体と長い足。彼の容姿は完璧だった。それは凛々しい彼にすっかり釘付けになっている貴婦人たちのため息がここまで聞こえてくるほどに――。
さて、自分はどうすればいい?
どうしよう。
つい先ほどワインを口にしたばかりなのに、喉はもう渇きを訴えている。
カルヴィンを射貫くような鋭い視線に耐えきれなくなったカルヴィンはワイングラスに残っているそれをすべて飲み干し、すっかり空になったグラスを小刻みに震える手でテーブルに置いた。それからなるべく足音を立てないよう、極めて静かに、ゆっくり後退る。
「カルヴィン?」
隣では、マートが挙動不審なカルヴィンの姿に困惑気味だ。どうやら彼はこちらへやって来るクリフォードが見えていないらしい。
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