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ActⅡ Scene 1 : 出遭い。⑤

 いくらマートがカルヴィンのパートナー役を買って出たとはいえ、彼に匿ってもらおうとは思わなかった。カルヴィンはマートのことをそこまで信頼できなかったのだ。  一歩、二歩とゆっくり後退る。すると背後で誰かとぶつかった。  すっかり怯えきっているカルヴィンの喉から短い悲鳴が上がる。 「も、申し訳ございません!」  喉は未だに緊張でひりついている。  カルヴィンはごくんと唾を飲み込むと、背後にいる人物に向かって腰を折った。 「いや、こちらこそ申し訳ない。距離さえも測れぬまま、美しい花に吸い寄せられてしまったんだ……」  間近に聞こえた男性の声はカルヴィンが思っていたよりもずっと低い。  かけられた声を合図に顔を上げた。  カルヴィンは目の前に立っていた彼の姿を見るなり、はっとした。  バラン・ド・ゴドフリーだ。  貴婦人たちの甘いため息と、そしてカルヴィンをライバルと見なしたらしい彼女たちの鋭い視線を浴びせられ、カルヴィンはまた胃がおかしくなりそうだった。  "窮地に立たされた王を助けた騎士"として名を馳せるバラン・ド・ゴドフリーは貴族の中でも一際輝かしい功績を残している。容姿もかなりのハンサムである。  ダークグリーンを基調としたジュストコールは腰まである美しいブロンドをさらに引き立てている。クリフォード・ウォルターやマートよりもさらに高い背に、広い肩幅。けれどその出で立ちは少しも下品には見えない。見るからに高貴な雰囲気を纏っていた。

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