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ActⅡ Scene 1 : 出遭い。⑥

 貴婦人たちは皆、彫りの深い目鼻立ちに凛々しい躰と腰まである艶やかなブロンドの彼に夢中だ。凛々しい伯爵の心を射止めようと胸元を大きく開いたドレスで女性らしさを強調したり、香水を匂わせて誘惑する。  彼は優れた騎士としてだけではなく、心優しい立派な紳士ぶりはとても有名だ。親に捨てられた教会の子供たちのために催し物を考えたりチャリティーなどにもすすんでバザーを送るほど慈愛に溢れていた。  しかしなぜだろう。  彼といるとどうしても躰の芯から冷たいものが這い回るように感じるのは……。  黒目の奥に凍りつくような何かを感じさせる。  カルヴィンは口を動かし、緊張でひりついた喉を動かした。金縛りにあったように躰が動かない。  カルヴィンとゴドフリー公爵の間にしばらくの沈黙が宿った。  するとほどなくして明るいワルツが会場に流れはじめる。 「一曲お願いできますか?」  ゴドフリー公爵はにっこり微笑み、右手を差し出す。カルヴィンは彼の誘いを受けるか否かを迷っていた。  彼からは何かしらの恐怖を駆り立てるものがある。近づかない方が良いとカルヴィンの本能が警告音を出している。しかし今は自分の素性を知られているかもしれないクリフォードから逃げるのが優先だ。  こうしている間にも、彼は人込みを掻き分けてこちらへ近づいて来ている。ゴドフリー公爵は最高地位公爵の称号を持っている。伯爵のクリフォードには足下にも及ばない。少なくともゴドフリー公爵の側にいればクリフォードは手出ししてこないだろう。

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