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ActⅡ Scene 2 : beautiful ④
あんなにマートに触れられることが嫌だったのに、躰が疼いている。
そっと顎を掬い取られ、分厚い唇が近づいてくる。
「……いや」
「どうして? ぼくがどんなに君を欲しているかは知っているだろう? 君がぼくの誘いを受けてこうしてパートナーになったのには理由があるはずだ。君も知らず知らずのうちにぼくに惹かれているからだろう?」
マートはとんだ自惚れ屋だ。カルヴィンは眉根を潜めた。それはそれは、深い皺を刻んでいるのが自分でもよくわかるほどに……。
円を描き、太腿を撫でられる肉厚な手は不快だ。そう感じているはずなのに、カルヴィンの躰がじくじくと疼く。クリノリンがなかったら、自らの欲望がスカートの下で強調していることが一目でわかるだろう。
「そうやっておれを追い詰めるのもいいが、カルヴィン。いい加減素直になってくれ」
「――あ、いや……」
自分はいつだって素直だ。ことさらマートには特に、だ。
それなのに、触れられた箇所から熱が宿り、欲望が歓喜に震える。
拒絶するカルヴィンを余所に、強引なマートはどうにか塞ごうと奮闘してくるからたまらない。分厚い唇をどうにか退けようとカルヴィンは精一杯上半身を捻る。
「正直になれ。ぼくが欲しいんだろう?」
冗談じゃない。躰は熱を帯びて欲しているかもしれないが、それもほんの一時の気の迷いだ。
それなのに――。
首を振り、いやいやを繰り返す翡翠の目には、快楽を求めて涙が散る。
マートの手がカルヴィンの欲望を捉えた。
「ほら、君の躰はぼくを欲しがっている」
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