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ActⅡ Scene 2 : beautiful ⑦

 ――果たしてクリフォードは何と言っただろうか。  今やカルヴィンにとって彼が話した言葉の内容を理解するのは困難だ。 「名前と住まいを教えてほしい」  もう一度、クリフォードはゆっくり尋ねた。 「カルヴィン・ゲリー。カランド通り3ー45……」  頭では彼が何を言ったのか理解できない。けれどもカルヴィンの口はまるで彼に魔法をかけられたようにすらすらと動いた。だから今、カルヴィンが女装をしていることも頭になかった。  彼は第一容疑者候補だ。その彼に住所を教えるなんてどうかしている。冷静な頭で少し考えれば危険だと思うことすらも判断能力が欠如していた。 「カルヴィン。いい名だ。さあ立てるか?」  骨張った手が差し伸べられる。  カルヴィンは抗いもせずに自らの手を、差し出された手に乗せた。すると履き慣れていないピンヒールが傾いた。 「……あ」  揺らぐ視界に小さな声が上がる。  転げそうになる躰を、差し出したその手が支えてくれた。  ――ああ、彼はこんなに力強く、たくましい。  距離が近づくと、ムスクの香りが鼻孔をくすぐる。  カルヴィンのみぞおちに熱が溜まっていく……。  カルヴィンは胸板に身を寄せた。  視界に薄い唇が写る。  今だけは自分が探偵だとか彼が何者かなんてどうでもいい。ただ、ハンサムなこの男性に近づきたい。そしてこの薄い唇を味わいたい。  カルヴィンは自ら腕を伸ばし、後頭部に触れると魅惑的な薄い唇にかぶりついた。  《Act Ⅱ Scene 2 : beautiful /完》

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