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ActⅡ Scene 4 : 試される良心。⑧
クリフォードは誘惑してくる彼を押しやると床の段差にそっと下ろし、座らせた。それから自分が着ているジュストコールを剥き出しになっている彼の肩にかけてやった。
屈み込み、ヒールを脱がせにかかる。灯りを灯さなくともはっきりと見ることができるこの良好な視界のおかげで彼のほっそりとした素足を容易に捉えられる。
クリフォードはこれで何度目になるだろう短い呻きを漏らし、壁にもたれている華奢な躰を抱き上げた。
いくつもの衣服は所狭しと床やベッドを占領している。
おそらくは今夜開催するパーティーに参加するための衣装を探していたのだろう。
よりにもよって女装とは――。カルヴィン・ゲリーには危機感というものがまるでない。
以前、バランによって殺された親族に瓜ふたつのカルヴィンが女性に扮装して潜入捜査をするなんてどんなに危険なことか。
こんな危ない賭をよくもまあ思いついたものだ。
おそらく、この入れ知恵もあの傲慢で利己的な一般人種に他ならないだろう。能なしのでくのぼう。あれにはこの言葉がしっくりくる。
クリフォードは苛立ち、小言を吐きながら足下に散らばった衣服を器用に除けていく。そうして横抱きにした彼をベッドに下ろそうとした時だった。
彼は口元を抑え、蹲った。
「気持ち、悪い」
顔色を窺うために覗き込めば、真っ青だ。嘔吐きはじめている。
「吐き出しなさい。きっと今より楽になる」
体内に溜まったアルコールも。媚薬も。すべて吐き出してしまえばいい。
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