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ActⅡ Scene 5 : reunion ②

 ――ともすれば、誰かに運んでもらったのだろうか。いったい誰に?  どうも昨夜の記憶が曖昧なものになっていて、はっきりしない。  こうやって寝具の中で考えている間にも、時間は刻一刻と過ぎていく。  結局、昨夜はマートのおかげでティアボルト伯爵が主催するパーティーに参加した当初の目的である、世間を騒がせている連続殺人犯の容疑者と思しきクリフォード・ウォルターを探ることができなかった。  犠牲者が出ていなければいいのだが――……。  とにかく、昨夜パーティーに同席していた人々の安否を確認したい。だからいつまでもベッドにしがみついてはいられない。  痛みを訴える頭をなんとか宥めながらカルヴィンがベッドから起き上がった時だ。下肢に宿っている熱を感じて蹲った。  欲望が太腿の間で息づいている。  カルヴィンは今になって初めて、頭痛と胸焼け以外の症状があることを知った。  ――いや、異変はそれだけではない。  いつも眠る時に被っている端切れを縫い合わせた布とは別に、肩からはらりと滑り落ちるが見えたのだ。  男性のジュストコールだ。  躰に掛けられていたこれはカルヴィンよりもずっと肩幅が広い。まるで闇夜に溶け込むかのような漆黒の色調はとても上品だ。このジュストコールの持ち主はとても裕福で、しかも気品に溢れた紳士だろう。なぜならどこにも皺が見当たらないからだ。 「いったい……だれの?」  昨夜はいったい自分の身に何が起こったのだろう。

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