104 / 275
ActⅡ Scene 5 : reunion ⑥
しばらくの間、ベッドで蹲っていると部屋のドアを何度も叩くけたたましい音が聞こえた。
あまりにも慌てていたから今着ている服装のことすらも念頭になかった。
カルヴィンが気にも留めずにドアを開けると、そこにいたのは眉間に皺を寄せた不機嫌なマートだった。
「君はあんなに疑っていたクリフォード・ウォルターと寝たのか?」
マートはカルヴィンの姿を見るなり、挑むかのような口調でまくし立ててくる。
なぜ、マートの口からクリフォードの名が出るのだろうか。
対するカルヴィンは何のことかわからず、顔を顰めた。
するとマートはカルヴィンの仕草が癪に触ったのだろう、いっそう鼻息を荒くして掴みかかってきた。
「だったらその傷はなんだ?」
人の目も気にすることなく、彼はカルヴィンを責める。
片方の腕を掴み上げ、右胸を指差す。
マートに指摘された箇所を見下ろせば、たしかに見慣れない傷があった。それは明らかに虫に噛まれたものではない。それに、左右を比べると、右の方がやや尖り、赤く色づいているようにも見える。
「どうして……」
カルヴィンは自分の姿に驚きを隠せない。震える声でぽそりと囁けば――。
「まだしらばっくれるのか!! 君は昨夜、奴といただろう!?」
奴? 奴って誰のこと?
覚えのない情事の傷と記憶してもいないことを尋ねられ、カルヴィンの頭はさらに痛む。
「触れられたのか? 最後までされたのか? くそっ!」
ともだちにシェアしよう!