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ActⅠ Scene 4 : 墓標での誓い。①

 ここはいつ来ても静かだ。  漆黒色に染まっている鴉が一羽、剥き出しの木の枝に止まり、寂しげに鳴いている。まるでこの世から去って逝った死者の魂を慰めるようだとカルヴィンは思った。  そんなこの場には鴉以外、人影のひとつもない。それというのも、世間ではコレラやハンセンといった感染病が流行っていたからに他ならない。  人々は感染病を恐れ、立ち寄りもしなかった。  十二月十五日。  今日はシャーリーンが白骨化遺体として発見された日だった。毎年この日になるとカルヴィンは借家から徒歩で片道約三時間弱ほどかけて訪れるのが慣わしになっていた。  こうして長い時間をかけて歩いていると、骨ばかりが目立つカルヴィンの躰はすっかり冬の冷気で冷たくなり、指先にはほとんど感覚がない。  汽車を使えば約一時間ほどで辿り着けるものの、庶民には運賃代が高く、なかなか手が出せないのが現状だった。  街から離れた小高いこの丘に、両親とシャーリーンが眠っている。  カトリックでもキリストでもない宗派の人々は皆、この広大な丘で安らかに眠っていた。  ここは教会が所属している墓地だ。キリストの墓標は十字架で知られているが、プロテスタントの数ある宗派の墓標は大小関係なく、色や形も様々に立ち並んでいる。  容赦なく木枯らしが吹き、木々の枝から葉を落としているというのに、この地に植えられた芝生は枯れることなく、どの季節でも新緑色をしている。まるでこの大地に眠る死者が生きているかのようだ。

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