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ActⅠ Scene 8 : Ballan Do Godfree ⑧
バランは人間の血液中に含まれる水分という水分すべてを奪い、腹を満たしたのだ。その結果、あらゆる水分を失った彼女たちは骨を残すばかりの遺体となってしまったのだ。
もちろん、ヴァンパイアの中にも淫魔という種族がいることなんかは彼らは知らない。
況してやヴァンパイアに効果があると伝われているにんにくや十字架なんかもクリフォードたちにとってどうということもない。姿が鏡に写らないなんていうのもただの迷信だ。しかし、中には事実も隠されている。今さらだがヴァンパイアが食欲を満たすのは血液だし、太陽は躰を焼き尽くす。、銀もまた肉体を腐敗させる。だからヴァンパイアかどうかを見極めるには実のところ太陽の下に出るか、銀で確かめるか、それとも食事方法を知るか。――のいずれかになる。
けれどもヴァンパイアだからといって全員が全員有害だとは限らない。クリフォードのように無理矢理ヴァンパイアにされ、政府直属のハンターとして過ごす者もいたからだ。
今から百五十年も前のことだ。クリフォードの父親は妻を愛していた。躰が弱い彼女のためにヴァンパイアになったが、その頃には既に彼女の躰はあまりにも衰弱していてヴァンパイアにすることができなかった。父親は死に逝く妻をただ指を咥えて見ているしかできず、そしてクリフォードは死を恐れた父親の手によって化け物へと変貌を遂げさせられた。そして自分を同じ化け物にした後、彼は突然失踪したのだ。
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