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ActⅠ Scene 8 : Ballan Do Godfree ⑨

 以来、クリフォードは長すぎる年月を一人、孤独に生きている。  自分が今何歳かなんてさしたる問題でもなくなった今、もう年も数えていない。実際のところ、長すぎる時間を生きているクリフォードにとって自分が何歳かも、もうすっかりわからなくなっていた。  クリフォードが政府直属のヴァンパイアハンターになったのは父親が失踪してから四年後のことだ。  政府はクリフォードの年齢を三十二歳に書き換え、他人との関係を持たなくても怪しまれないよう、幼少の頃に母が病で亡くなり、父親は二十歳の時に失踪。親戚もおらず孤独に生きるという経歴にした。  そして今から十年前。クリフォードは自分の屋敷を売り払い、人々が集うこの地に賭博クラブ、The crazyをオープンさせた。そうしたのは、ヴァンパイアハンターとして化け物狩りの情報を得やすくするためだ。当然、非会員制にしたのも意味がある。  会員制よりも非会員制の方がより人の出入りが多く、情報を得やすいと思ったからだ。  その甲斐あってか、クリフォードの狙いは命中し、新たな情報を誰よりも早く手に入れることができたのはこのためだ。そして一昨日前の夜、例の路地裏で奇しくも彼女シャーリーン・ゲリ―の親族である彼と出会したのである。  世間は伯爵という地位にありながら、賭博クラブで経営者として働くクリフォードを偏屈者として捉えていた。そういうこともあってか、探偵の彼は第一発見者であるクリフォードがシャーリーンをこの世から消し去った張本人で、この一連の犯人だと睨んだのだろう。

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