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ActⅠ Scene 8 : Ballan Do Godfree ⑪
「八方塞がりか……困ったものだな」
静かな空間に、ティムの声が虚しく響く。
「何にせよ、このまま見過ごしにはできない。――来週の土曜、ティアボルト伯邸で社交パーティーが開かれるらしい。奴も来るとの情報が入った」
強欲に塗れたバランのことだ。おそらくティアボルト伯邸でめぼしい女性を選ぶに違いない。
「キーワードは純潔の乙女か」
「ああ」
クリフォードは静かに頷いた。
彼の牙の餌食になるのは決まってバージンの女性だった。
――というのも、淫魔は処女の血を欲する習性があった。
クリフォードは味わいたくもないが、なんでも処女の血は甘く、美味いらしい。
顎を乗せている手に力が入る。
これ以上の惨劇を繰り返してはならない。
「奴は必ず動く」
クリフォードは奥歯を噛み締め、誰に言うでもなく静かに口を開いた。
《Scene 8 : Ballan Do Godfree/完》
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