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ActⅡ Scene 4 : 試される良心。⑫
ともすれば、媚薬による彼の躰へもたらす副作用はかなり強い。おそらくカルヴィンの脳や肝臓に多大な負担がかかっている可能性がある。
本当に彼のことを愛しているのなら、健康を損なわせてまで自分のものにしようとするなんて間違っている。
クリフォードはカルヴィンに媚薬を与えた能なしのでくのぼうを心の中で罵った。
ヴァンパイアが彼の体内から媚薬を血液中から取り除くことなんてしごく簡単だ。しかし、その後が問題だった。媚薬を含む血液を抜き取れば、彼の身体からは当然血液が失われることになる。健康的な食事を摂取すれば可能だが、調理場にはじゃがいもしか見当たらなかった。彼の食生活を見れば結果は目に見えている。
そうなれば彼は貧血を起こし、躰に不調が出てしまう。
解決方法はあることにはある。けれどもそれも多大なリスクを負うことになる。
クリフォードの血液を相手に送り込めさえすれば貧血になることもない。
しかし、そうなれば彼は特異種となり、一生が台無しになってしまう。
たった一度の過ちで、彼の人生のすべてを奪ってしまうのはあまりにも酷だ。孤独を埋めるためにクリフォードをヴァンパイアにした父親のような、愚かな真似はできない。
……仕方がない。
クリフォードは決意するとほんの少し目を閉ざし、熱を持ち悶えている彼の背にそっと腕を回した。そうしてドレスの中に手を忍ばせる。ドロワーズをくぐり抜け、臀部の形をたしかめるようにしてなぞる。
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