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ActⅡ Scene 6 : 底知れない恐怖。③

 そんな中、メイドがオーダーを受けるためにゴドフリー公爵とカルヴィンの隣に立った。カルヴィンはこの場に自分ひとりが取り残されたという事実が違ったことにほんの少し安堵した。本心を見抜かれないよう、ゴドフリー公爵に微笑みかけると紅茶を注文した。  とにかく、このカフェに置いているメニューは値段が高すぎる。カルヴィンの三日分の食費がたった一杯の紅茶で吹き飛んでしまうくらいに……。  しかし、ゴドフリー公爵はそれを快く思わなかった。カルヴィンの言葉を無言のまま手のひらで制すると慣れた様子で、キッシュとコーヒーを二人分注文した。  やがて用事を済ませたメイドは背を向け、厨房に入っていく。  メイドの姿が見えなくなると、カルヴィンの心が一気にざわついてしまう。この場に彼とふたりきりにさせないでと願ってしまう。  カルヴィンの心情を知らないゴドフリー公爵はひとつ咳払いをしてから話を戻した。   「余計なお節介かもしれないが、マート・トマスと友好関係を続けるのははあまりおすすめできないな。世間ではまずまずの評判らしいがぼくはあまり好かない。彼はあまりにも自分勝手すぎる」  マートとの話まで聞かれていたとは思わず、しらばっくれるのも今さらだと観念したカルヴィンはややあって口を開いた。 「姉、シャーリーンがクリフォードに襲われたかもしれないんです。一週間前、白骨化した遺体を発見しました。そこにクリフォード・ウォルター伯爵もいたんです。たとえ彼が犯人じゃないとしても、きっと何か知っているはずだと思ったんです」  ああ、ゴドフリー公爵といると息が詰まる。  彼には何の罪はないが、けれども居心地が悪い。

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