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ActⅡ Scene 8 : truth or lie ③

 長い足、伸びた背筋。すらりとした出で立ちの彼はワイングラスを片手に、何やら紳士と談笑していた。  口角を上げ、静かに笑みを浮かべる彼は本当に美しい。  カルヴィンは仕事で張り込みをしているわけだが、意識しなくても目が勝手に彼を追う。  自信に満ち溢れる伸びた背筋は凛々しく、その場にいる誰にも引けを取らない。  クラブの中でたくさんいるどの紳士よりもずっと存在感がある。人込みの中でも真っ先に見つけられたのは、彼がもつ美しい容姿と圧倒敵存在感のおかげだ。  自分だってもっと近くで微笑を浮かべるクリフォードを見てみたい。  願わくば、自分に笑いかけてはくれないだろうか。  そこまで考えた時、カルヴィンは我に返った。  自分はいったい何を考えていただろう。  ここへ来た理由はけっして"彼の追っかけ"ではなく、"身辺を探るため"だ。  まったく"The crazy"とはよく名づけたものだ。  このクラブの名前こそ、美しい容姿で人を狂わせる彼そのものだと、カルヴィンは心の中で毒づいた。  ちょうどその時だ。  クリフォードの視線がこちらを見たような気がして咄嗟に身を屈めた。  それから恐る恐る窓を覗き込めば――大丈夫。引き続き紳士と談笑している。自分の存在はまだ知られていない。  カルヴィンはそっと詰めていた息を吐いた。体制を整えるためにもう一度しゃがみ込む。  ……それにしても今夜はずっと冷える。  冷たい夜気がカルヴィンを包み込む。  空を見上げれば深い藍色の黒雲が闇色のヴェールで覆っている。

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