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Act Ⅲ Scene 1 : fallen angel ③

 そこでカルヴィンははっとした。  目覚める前の出来事が奔流のように蘇ってくる。  そう。カルヴィンはクリフォード・ウォルターが経営する賭博クラブの屋敷前で意識を失ったのだ。  ――ともすればここは彼の屋敷内だろうか。  なるほど、だとすれば立派な屋敷もメイドの姿が見えるのも頷ける。上流階級の彼ならばピアノも容易に弾けるだろう。あの骨張った長い指が鍵盤を弾くのはバロックだろうか。繊細でかつ大胆に弾き出される音色は美しいに違いない。そしてピアノの音色と同じくらい、いやそれ以上かもしれない彼の容姿は完璧だろう。薄い唇に微笑を浮かべ、まさに堕天使さながらに女性だけでなく男性も虜になるだろう。  そして自分も――。  そこまで想像した時だ。カルヴィンははっとした。それから眉間に皺を寄せ、低く呻る。  ああ、自分はいったい何を考えたのだろうか。クリフォードはシャーリーンの仇かもしれないのに!!  そこで思い出したのはゴドフリー公爵が話していた、クリフォードが人間ではなくヴァンパイアかもしれないという内容だ。  もし、ゴドフリー公爵の言うことが本当ならば、彼は地下にいるのかもしれない。  幸い今は日中だ。  ヴァンパイアは太陽の光を浴びれば灰と化してしまうということをオカルト雑誌などで目にしたことがある。たしかにこの屋敷内は太陽に照らされている。大きな窓に立派なバルコニーがある。しかし地下ならどうだろう。

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