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Act Ⅲ Scene 1 : fallen angel ④
もし、クリフォード・ウォルター伯爵がヴァンパイアならばおそらくは陽光が入り込まない地下室にいるはずだ。
とにかく地下に行ってみよう。そう決意するものの、何分ここはカルヴィンが初めて足を踏み入れた屋敷で、しかも一階は賭博クラブになっている。カルヴィンにとって未開の地であるここは、どこに何があるのかさえもわからない。
一般的な上流階級の屋敷ならば二階に従業員の寝室。離れに主寝室。一階には調理場があり、調理室から続く地階にワインセラーや食料庫がある。もし、他の屋敷とウォルター邸の構造が同じなら、一階に調理場があるはずだ。ただ、クリフォード・ウォルターがそこまで常識外れに度をいきすぎてなければ――の話だが……。
とにかく、一階に行ってみるしかない。ここは敵地だ。結局、自分は招かれざる客。カルヴィンがどこで何をしていても目障り極まりないだろうから――。
カルヴィンは怖じ気づきそうになる気持ちを奮い立たせると、広い階段を下りた。
いっそう人目に付きやすい踊り場に立ってみれば、相変わらずメイドたちはカルヴィンを不躾な態度で見てくるものの、別段何も言ってくるわけでもない。カルヴィンは突き刺さすような鋭い視線を背中に受けながら、おそらくは一階にあるだろう調理場へと向かった。
「なんだお前、新入りか?」
調理場に向かうなり、白を基調とした制服に袖を通した小太りの中年男性がカルヴィンの姿を見るなり訊ねてきた。
彼は口髭が自慢なのだろうか、人差し指でいくらか撫でながらそう言った。
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