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Act Ⅲ Scene 1 : fallen angel ⑤

 やはりクリフォード・ウォルターは変わり者だ。本来、調理場は女の場所であり男の持ち場ではない。それなのに、キッチンには男性の調理人がいて、神聖なこの場を仕切っていた。  カルヴィンは意図も容易く常識を覆すクリフォードの思考が信じられなかった。 「あ、はいそうです」  カルヴィンが咄嗟に生返事で頷けば、 「だったらやって来て早々悪いが今からワインセラーに行ってワインを取ってきてくれ。詳しくはこのメモに書いてある」  料理長と思しき男は簡素な文字で書きしたためた小さな羊皮紙を手渡してきた。  これはなんという好都合だろう。カルヴィンは内心にやりとした。それというのも用事を言い渡されたワインセラーはだいたい冷所――つまりは地下にある。そこはまさにカルヴィンが目指している場所に他ならなかったからだ。 「ワインセラーはそこのハッチを開けた地下に繋がっている。ああ、それから地下は暗いから蝋燭を持って行くといい」  カルヴィンは料理長の言われるがまま、蝋燭を受け取ると床に嵌め込まれているハッチを開ける。中を覗き込めば、大人二人がどうにか並んで歩けるくらいの狭い石段が下に向かって伸びていた。  カルヴィンは地下室のワインセラー――もとよりクリフォードの(ねぐら)を探すために恐る恐る階段を下りて行った。  地下へ進む道は薄暗いと言うにはあまりにも軽々しい。  ほんの小さな蝋燭の炎がこれほど頼りになるとは今まで思いもしなかった。

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