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Act Ⅲ Scene 1 : fallen angel ⑥

 蝋燭の炎が頼りなげに揺れている。  地下のどこかしらから吹く冷たい空気が小さな風に変化して時折炎が消えそうになる。足を動かすたびにひんやりとした重い空気がカルヴィンの躰に纏わり付いてくるようだ。  ここのどこかにクリフォードがいる。  なぜだかわからないが、歩を進めるごとに核心めいたものが湧き出てきた。  おぼつかない足取りで長い石段の最後を踏み、ようやく地下に辿り着いた。周囲は静寂に包まれている。  音の無い世界の中でカルヴィンが足を踏み入れる靴音だけが響き渡る。それがとても恐ろしい。  無という静寂がこれほど恐怖心を煽るなんて思いもしなかった。  照明も薄暗く、手にしている蝋燭でなんとか一メートルほどの視野が見える程度だ。  鉄でできた重々しいドアがいくらか並んでいる。カルヴィンはドアノブを回し、ひとつずつドアを開けていく。あまりにも軋んだ重低のある音を立てて開から、この音でクリフォードが目覚めてしまうのではないかという不安さえも過ぎる。  カルヴィンは口の中に溜まった唾を喉の奥に押しやる。  まずひとつ目のドアは、掃除道具などが並ぶ倉庫だ。かび臭い匂いが充満している。カルヴィンは眉間に深い皺を刻み、すぐにドアを閉めた。  クリフォードの姿を確認しなかったのは、認めたくはないが彼はハンサムで綺麗にしている。そのクリフォードがかび臭い匂いが充満する倉庫にいるとは思わなかったからだ。

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