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Act Ⅲ Scene 1 : fallen angel ⑦

 ふたつ目のドアは、ワインセラーだ。様々な高級そうなワインが所狭しにずらりと並んでいる。この場所こそが料理長から言付かった場所ではあるが、今のカルヴィンには無用の部屋だった。  ドアを閉め、次のドアノブを回す。羊皮紙の匂いがぷんと漂うそこは書斎だった。十帖はあるだろう四隅一面には天井まで届くほどの書物が陳列している。中央には机と椅子があるばかりだ。やはりここにもクリフォードはいない。  ――となれば、これが最後の部屋だ。  緊張で体が強張る。  カルヴィンはごくりと唾を飲んだ。  最奥の突き当たりにある部屋のドアノブを掴んだ――時だった。 「そこで何をしている?」  ふいに張りのある男性の声がした。  あまりにもびっくりしすぎたからもう少しで手から蝋燭を取りこぼすところだった。  肩を縮めて恐る恐る振り返れば、そこには色黒の肌をした三十代半ばくらいの男性が立っていた。服装はまるでこの地下通路に溶け込むようだ。漆黒の礼服に身を包んでいた。  この男は見たことがある。  波打つ肩まである髪をひとつに束ね、けっして細身ではないが筋肉質でもない。高い長身にすらりと伸びた長い足。褐色がかった肌の色。この男はたしか、"The Crazy"の支配人だ。 「なんだ、君か――気分はどうだい?」  男はカルヴィンを見るなり、先ほどの威圧的な口調から打って変わって静かなものに変化した。 「気分?」  いったいどういう意味だろう? 「覚えていないかい? 君は玄関口で雨の中倒れていたんだよ」

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