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Act Ⅲ Scene 1 : fallen angel ⑪

 この墓地はカルヴィンがよく知っている。  ここは常にカルヴィンが行き来している場所――。家族と呼べる人たちがこの地に眠っている墓地だ。  いったい彼はなんだって自分をここに呼んだのだろう。  疑問に思いながらも、ティムの後ろを着いていくと、彼はひとつの墓標の前で止まった。 「ここだ」  ティムが腰を下ろした先には、真新しい百合の花束が置いてある。シャーリーンが眠っている場所だ。  ああ、また。  生前姉が大好きだった百合の花を添えてくれている。  命日でもないのに、また来てくれたのだ。  カルヴィンの胸が熱くなる。  その中でティムは静かに口を開いた。 「この花、誰が添えたものかわかるかい?」 「え?」  誰が添えただって?  そんなの自分が知りたいくらいだ。  こうして百合を添えてくれる心優しい人。  どこに住んでいて何をしている人なのか。  彼なのか、それとも彼女なのかさえもわからない。 「それはぼくが知りたいくらいです」  カルヴィンはゆっくり首を振る。するとティムは大きく頷いて見せた。  まさか、ティムはこの花を添えた人物を知っているのだろうか。彼の顔を期待を膨らませてまじまじと見上げれば――。薄い唇から突いて出た名前はカルヴィンが思いもしなかった人物だった。 「クリフォードだよ」 「え?」  クリフォード?  ティムがいうクリフォードとは、あのクリフォード・ウォルター伯爵のことだろうか。  世間では呪われた血族と呼ばれている、あの冷酷非道なクリフォードだというの?

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