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Act Ⅲ Scene 1 : fallen angel ⑫

「薄々と気づきはじめているかもしれないが、彼は君の敵じゃない」  ティムの言葉にカルヴィンは絶句した。  驚きすぎて声が出ない。  カルヴィンは瞬きを繰り返すばかりだ。 「君はウォルター伯爵が今世間を騒がせている殺人犯だと思っているようだね。実はウォルター伯爵はあの事件の第一発見者なんだ。彼も彼なりに人知れず事件を捜査していてね――」  カルヴィンは自分の耳を疑った。  第一発見者ということはつまり、クリフォードがシャーリーンを看取ってくれたというのか。  たしかに、犯人を追っているのであれば、先日カルヴィンが森の中で遺体を見つけた当初にクリフォードと遭遇したのも頷ける。  しかし、果たしてティム・コナ―の証言は本当に正しいのだろうか。なにせ彼はクリフォードの部下である。雇い主が有利になるようでっちあげた話を語っているだけなのかもしれないのだ。  カルヴィンが新に入手した情報をどう受け取るか算段している中、ティムは続けた。 「君が――世間が言うほどの悪い男手はないんだ。まあ、無愛想なところなんかは当たっているけれどね。幼い頃に母君を亡くし、父親は蒸発。おかげで他人ととどう接したらいいのかわからない、不器用な性格なだけなんだよ」  まさか。  彼がシャーリーンに花を添えてくれていた人だったなんて……。  ティムの話を疑おうにも辻褄が合いすぎている気がするのは自分の気のせいだろうか。 「ああ、あともうひとつ」  ティムは人差し指をカルヴィンの前に突き出した。

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