142 / 275

Act Ⅲ Scene 2 : a culprit ②

 ゴドフリー邸はとにかく広い。まるで王族のような屋敷をぐるりと囲む庭は真冬ということもあり寂しいが、エメラルドグリーンを思わせる花弁が美しいレンテンローズ、白い花弁のヘレボルスが静かに咲いていた。玄関ホールだけでもカルヴィンが借りている部屋の三倍は軽くある。  屋敷の中に足を踏み入れた途端に香ってくるのはローズの強い香りだ。この香りはまるで思考を妨げようとするかのような、何もかもを麻痺させてくるような匂いだと思った。  二十帖はあるだろうこの客間もまた広い。クリーム色の壁面に囲まれた客間はとても優雅で、天井にある大きなシャンデリアは大広間を思わせるほど豪華な装飾が施されている。加えて燃えるような赤の色をした絨毯は靴の上からでもわかるほど肌触りが良い。  やはり公爵家の屋敷は違う。自分とは雲泥の差だと知ってはいたものの、この客間を見ただけでも身分の違いを思い知らされる。壁に埋め込まれている巨大な暖炉は眩いばかりの太陽光が差し込んでいるというのに贅沢にも炎が灯され、パチパチと乾いた音が空虚な空間を埋める。  メイドが紅茶を運んでくれたが、初めて訪れた屋敷で、しかも公爵の目の前でくつろげるような強靱な精神は生憎持ちあわせていない。  カップを手に取ることさえもできず、ただただ膝の上で手を握り締める。 「本当にクリフォードが犯人なんでしょうか?」  メイドが去り、ふたりきりになったところでカルヴィンは身を固くして目の前にいるゴドフリー公爵に尋ねた。

ともだちにシェアしよう!